現在社畜の掌編とエッセイ

思いつくままに頭の中身を偏らない視点を意識しながら掌編やエッセイとして出力します。

秋は裸になると鼻血が出ると云ふこと

今週のお題「秋の準備」

 

 秋とは鼻血 - Wikipediaの季節だ。秋になれば、人は裸になると鼻血が出る。そのような構造になっている。理由なんか無い。きっと、神様があのリンゴの中に仕組んでいたんだ。それか、アダムとイブをそそのかした蛇、そいつの仕業に違いない。全くもって迷惑千万、有史以来から今日に至るまで、呪いを受けているようなものだ。

 

 医学的には証明されている。裸になると、人間の表皮の温度が低下する。そうすると恒温動物の特徴から、体温を維持しようとする機能が働く。すると、全身の血液の流れる量が増え、体を活性化させようとする。犬や猫、チンパンジーやゴリラ、あいつらは十分な体毛があるから、そこまでの温度調整機能は必要ではない。しかし、霊長類の長たる人間は、何の因果か知らないけれど、体毛が薄くなっている。男性の場合、望まなくともどんどん薄くなる場合もある。クソっ! と、スマン脱線した。そんなことはどうでも良い。言いたいのは、人間は他の哺乳類と比較にならないほどの血圧上昇が見られるってことだ。

 

 つまり、裸になると鼻血が出るのは、冬場に、暖かい居間から寒いトイレに入る時に起こるヒートショック現象 - Wikipediaの 一種である。高齢者は、脳卒中心筋梗塞 を起こす可能性があるが、まだまだ若い人たちは、脳の真下にある血管の薄い部分、鼻腔内にてトラブルが発生するのだ。

 

 鼻血くらい日常じゃん。皆さん、そう思われているかもしれない。だが、その認識は甘い。鼻血によってとんでもないトラブルに巻き込まれることもあるのだ。そう、あれは、高校二年生のときのこと……いや、駄目だ。こんなところで書くわけにはいかん。人生を狂わせるようなトラブルの話なんて匿名であれ書く気にはなれない。

 

 そんな大変な話ではなくても、貧血を起こすこともあるし、ショック性のダメージを受けることもある。鼻血を放置していることで、より粘膜が傷つきやすくなり鼻血が出やすくなる体質になる場合もあるし、もっと重大な病気が隠されている場合もある。気になった場合は、耳鼻科に行くべきだ。餅は餅屋。病気はお医者。と昔からの諺にある通りだ。

 

 ただ、秋は別だ。秋になれば鼻血が出る。それは恒例行事、通過儀礼みたいなもので、お前、春と秋、どちらが好き? って訊かれた時、春の花粉症とどちらを選択するかという究極のアルティメット選択に通じるものがある。それくらい、裸になることで鼻血が出る世の中は至って当たり前の世界である。だから悩む必要は無い。だって、人間だもの。

 

 要するに、通常のレベルならば、鼻血が出ても気に病むことはないのだ。お気楽極楽に過ごせばいい。私なんか慣れっこで無意識のうちに鼻筋を圧迫して止血しているくらいになってるんだから。世の中の紳士淑女も、鼻血ウェルカムになればいい。そう常々思っているのだが、一つ、許せないことがある。それは、マスコミである。

 

 春に花粉情報を流すのに、秋に鼻血情報を流さないというのは、どのような理由だろうか。意味もなく放置しているのならば怠慢である。職務を果たしていないと言うべきだろう。

 

 その癖、鼻血を流すと、破廉恥なことを考えていたのでは、などと蒙昧虚妄甚だしい戯言を垂れ流す。そんなの医学的根拠は全く無い。断言してもいい。裸を見ると鼻血が出るってのは、偉大な漫画家がギャグとして描いたもので、事実とは異なるのだ。バナナの皮ですっころぶって定番のギャグと同じぐらいの普遍性を持ったジョークなのだ。

 

 それなのに、マスコミが勘違いをさせるばかりに、私がちーとばかり、裸になって踊って鼻血を出した程度のことで、変態扱いする人間が絶えなくなるのだ。

 

 誰だって、皆、秋になって裸になれば、鼻血を流すものだろっ!

 

 ――えっ……。

 

 ――流さない?!

 

 ――ほんと……ッ? 嘘でしょ……。

 

 えええええええええええぇぇぇぇぇ、秋になったら鼻血を出しちゃうの私だけっ?

 

 き、きっと、黙っているだけだよね。みんな言わないだけだよね。そうだ。そうに違いない。うん。ほら、みんなで鼻血を出しても困らないようにポケットティッシュを常備しよう。ねっ……。